研究者の世界を知る・新書3選

研究者の世界を知る・新書3選


研究者の仕事は何か。それは研究の成果を論文にまとめること。
当然、その論文は世界初の成果になっている必要があります。世間では自分の好きな研究をしている、どこか浮世離れしたイメージがあるかもしれませんが、 現実には世界中にいるライバル研究者よりも速く成果をまとめるためにシビアな競争を行っています。
また、日本の大学の研究環境は、欧米や中国のそれと比べて大変に厳しい状況を強いられていると言われます。
そんな普段目にすることのない、研究者の世界の一端を知ることのできる新書3冊を紹介します。




①:『バッタを倒しにアフリカへ』

著:前野ウルド浩太郎、光文社新書、2017年

バッタを倒しにアフリカへ (光文社新書)

昆虫学者としての成果を出すべく、バッタの研究のために西アフリカのモーリタニアで悪戦苦闘する若き研究者の記録。現地の研究所の人々とのどこかコミカルで、心温まるやり取りや、アフリカという厳しい環境で様々な問題に直面する中で 研究を継続する著者のたくましさに圧倒されます。
将来を保証されていない研究者の厳しい世界も垣間見ることができます。

著者がアフリカで苦労してきた数々のエピソードを経て、最終版にある、帰国後にのぞんだ京都大学・白眉プロジェクトの面接の様子は、著者の気持ちに共感して胸を熱くするものがありました。

純粋に読み物として面白いです。また、アフリカの広大な大地を撮影した写真も美しく、とても楽しい読書時間を過ごせます。


引用
 夢を追うのは代償が伴うので心臓に悪いけど、叶ったときの喜びは病みつきになってしまう。叶う、叶わないは置いておいて、夢を持つと、喜びや楽しみが増えて、気分よく努力ができる。
 (中略)
 夢の数だけ喜びは増えるから、大小構わず夢探しの毎日だ。




②:『スーパーコンピューターを20万円で創る』

伊藤智義、集英社新書、2007年

スーパーコンピューターを20万円で創る (集英社新書)

制約が多い状況下で知恵を絞り、自分で道具を作って課題を解決する話が個人的に好きです。
本書は、ある天文分野の研究チームの研究を進めるために、天文分野専用のスーパーコンピューターを、コンピュータの専門家ではない著者が創り上げていく話です。

舞台は1989年の東京大学。天才・秀才・異才が集まり、課題を克服をしていく様子は、さながらNHKの「プロジェクトX」を彷彿させる内容です。 私は天文分野の話は全くの門外漢ですが、その辺りは特に問題にならず、知的好奇心を満足させてくれる内容です。加えて、個性豊かな研究者の様子の描写も面白く、全く飽きることもありませんでした。

苦労は大変多かったと思いますが、こういったプロジェクトに挑戦できる著者が少し羨ましくもあります。

引用
 世界一の研究を成し遂げるには方法が二つある。一つは世界一頭が良くなること。もう一つは世界中で誰もやっていないことをやること




③:『学者になるか、起業家になるか』

著:城戸淳二、坂本桂一、PHP新書、2011年

学者になるか、起業家になるか (PHP新書)

学者(城戸氏)と起業家(坂本氏)の対談をまとめた本書。研究の話、ビジネスの話、教育の話、想像力の育て方等、内容が多岐にわたります。

示唆に富む話が多く、著者の圧倒的な熱量を前に、自分の努力不足をただ恥じ入ってしまいます。探求する日々を過ごさねばと思います。時間はもうあまり残されていない!

引用
 要するに、何ごとも中途半端な理解で終わってしまっているのです。本来ならもう3段くらい前に進んでいるはずなのに、それができていない。(中略)すごく浅いレベルで満足してしまう人からは、何ものも生まれてきません。



コメント

このブログの人気の投稿

人生に効く丸山健二の本・4選

勢古浩爾『自分がおじいさんになるということ』

圧倒的な努力量で成果を出す人から学ぶ・4書