自分の生き方を考えさせてくれる日記・2書
自分の生き方を考えさせてくれる日記・2書
①:『山谷崖っぷち日記』
大山志朗、角川文庫、2002年
「つまるところ、私は人生に向いていない人間なのだ」
会社勤めに挫折をし、建設作業員として山谷のいわゆるドヤ街で、たたみ一畳のベッドハウスに住み着き、そこでの日常を記した日記です。本書は絶望的な感情に支配されているわけではなく、著者の内省的で落ち着いた文体で山谷の生活、山谷で生きる人々の様子が淡々と綴られています。
同じような生き方はできないな、と思いつつも、非日常世界である「山谷」で生きる人々を観察した内容は、とても興味深いものがあります。また、私も"社会人"をそれなりに経験したうえで本書を久しぶりに読み直すと、著者の言葉にハッとさせられることが以前よりも多くなったようにも感じます。
本書は2000年に第九回開高健賞を受賞。現代の「方丈記」と選考委員から絶賛されたとのこと。
引用
私は、私に見合った生活に辿りついている。これには何の不足も過剰もなく、何の不満を抱くいわれもないのだ。
(中略)
どんなことがあっても、このような場所に辿りついた私の宿命に対し、絶対に悔恨なんかは抱いてやらないつもりだ。
(中略)
どんなことがあっても、このような場所に辿りついた私の宿命に対し、絶対に悔恨なんかは抱いてやらないつもりだ。
②:『波止場日記』
著:エリック・ホッファー、みすず書房、1971年
著者は1902年にニューヨークに生まれ、鉱山夫、農業労働者、港湾労働者として過ごしてきました。15歳まではほとんど盲目に近い状態であったらしく、視力をとり戻してからは、むさぼるように読書に耽ったとのことです。
本書は1958年6月から59年5月にかけての日記。毎日の労働と、著者の人間と世界への鋭い洞察にあふれる内容です。
学生時代にエリック・ホッファーを知り、当時は以下の一文などに憧れたものです。自分が満足するのに必要なものは何だろうかと、ふと思います。
引用
世間は私に対して何ら尽す義務はない、という確信からかすかな喜びを得ている。私が満足するのに必要なものはごくわずかである。一日二回のおいしい食事、タバコ、私の関心をひく本、少々の著述を毎日。これが、私にとっては生活のすべてである。
人と群れることのない生き方にも憧れたものです。
引用
人々にまじって生活しながら、しかも孤独でいる。これが、創造にとって最適な状況である。このような状況は都会にはあるけれども村とか小さな町にはない。創造的状況の他の構成要素は、きまりきったこと、刺激のなさ、さらに少々の退屈と嫌悪などである。ほとんどの場合、創造の原動力となるのはささいな、だが持続的ないらだちに対するおだやかな反発である。
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